国際経済

若干のレイアウトの修正(12/28/2003)


■アルゼンチンの経済危機についてのアウトライン

・2001年12月23日に暫定大統領により対外債務の一時支払い停止(モラトリアム)が宣言された。
その結果、デフォルトに陥ることが確実になった。

そもそもなぜ、アルゼンチンはここまでの経済危機に追い込まれたのであろうか?
ここで注目するのは、同国の採用していた通貨制度だと思います。具体的には次の通りです。

その通貨制度によると、ペソと米ドルをは1対1で固定したレートによる取引である。
ここで私が考えるのは、ドルとの為替レートをそれだけ高く固定して設定しておけば、後発国アルゼンチンにおいて資金調達が容易であるということである。

しかし、それにはリスクも伴うと思う。
固定的な為替レートであるが故に、外貨準備のコントロールに制約が変動為替レートよりもかかるということである。
そしてまた、外貨獲得の条件が次の通りになる。

1.輸出
2.国外からの資本流入

そして、外貨獲得により外貨準備が決まり、それによりベースマネーが決まる、その結果貨幣乗数効果によりマネーサプライも決まる。これが金融システムの基本だと思います。これを踏まえて次のステップに移りたいと思います。


ここでまず、近年の世界の経済動向を見てみます。
アメリカは景気が悪化していて、それに伴い世界経済も減速している。ここで考慮するのは次の点だと思います。

つまり、世界経済が低迷している以上アルゼンチンにおける輸出の伸びは期待しづらい。アルゼンチン国内に目を向ければ、高いインフレに政情不安(カントリーリスク)。そういった国には投資による資本流入はおきづらいと思われます。
この2点から、上述した金融システムにおいてベースマネーが減少する事が考えられます。その結果、インフレが進行していてかつマネーサプライが減少している経済においては、総支出量も減少することが考えられます。(詳しいことはケンブリッジ式によるマネーサプライの式を全微分すればパーセント表示すればいいと思います)その結果、実体経済の悪化が進行していきます。

ただ、ここで考慮しておくべきは、外貨が減少している状況においてそれを放置しないであろうということである。つまり、今日のグローバル化した金融システムによって外貨を調達することが実は可能なのである。
サムライボンド等の債券を発行することによって外貨が獲得可能なのである。それによって外貨準備を一定にしてベースマネーを安定させることが可能である。しかし、このページのトップで書いたように、現在は対外債務の一時支払い停止(モラトリアム)が宣言されている。余談になりますが、その結果サムライボンドなどを購入した投資家はマル損になる可能性があるということです。当然日本経済にもその事が多少ながらも影響してくるでしょう。(財務省はその事に言及しています)



    サムライ債の発行額の推移を下のグラフに示したいと思います。

このグラフから次のことがはっきりと分かると思います。
2000年の発行額がそれまでの発行額のレンジからかけ離れた異常値を示しています。
つまり、2000年は外国の企業・政府が異常な勢いでサムライ債を発行していた(異常な円需要があった)ということです。このことは一体何を意味するのだろうか?
それは、外国の政府(アルゼンチン)を例にするなら、急激に外貨準備が足りなくなったためにサムライ債を発行したということです。つまり当然その裏側には、輸出・国外からの資本流入の減少による外貨準備の減少があると思われます。このことがさらに実体経済を悪化させる懸念があったためにサムライ債による円の調達をしたのではないか?
そういったことが考えられます。


■固定相場制を取ることのメリット

まず、開放経済モデルを考えてみます。そしてマンデル・フレミング・モデルを活用すれば容易に分かりますが、固定為替を採用していたら財政支出が容易に国民所得の増大を可能にさせるのである。(不胎化政策を採用しない場合)

上記のようなメリットが理由の一つにもなりアルゼンチンは固定為替を採用したのではないのだろうか?