|
◆ 義を見てせざるは、勇なきなり。 [為政第二]
|
原文の意味・解釈
あまりにも有名な言葉なので、解釈はいらないでしょう。
原典では、この言葉の前に「その鬼にあらず、これを祭るは諂うなり」が入っている。
この時代の中国では人の吉凶禍福は、鬼神が司るものだと思われておりましたが、孔子
は違っておりました。孔子は祖先の霊は信じ、大自然の神秘の力は、神として崇敬して
いたが迷信、邪教のたぐいは徹底的に排除しました。
「そんなことをすると鬼にたたられる。」などと言って正しい事が行われないようでは
世の中はいつまでたっても良くならない。そんな事におびえる必要はない。もっと正義
を貫く勇気を持てと激励した。
<ウィンストン・チャーチル(英国の名宰相)の言>
「金や名誉を失うことは小さなことだ。しかし、勇気を失えばすべてを失う。」
|
◆ 君子は義を以って上と為す。勇ありて義なきは乱を為す。
小人、勇ありて義なきは盗みを為す。 [陽貨第十七]
|
原文の意味・解釈
この章の全文{陽貨(ようか)第十七第二十三章}は次の通りです。
子路曰、君子尚勇乎、
子曰、
君子義以爲上、
君子有勇而無義爲亂、
小人有勇而無義爲盗。
子路が曰わく、君子勇を尚(とうと)ぶか。
子、曰(のたま)わく、
君子義以って上(かみ)と爲す。
君子勇有りて義なければ亂(らん)を爲す。
小人勇有りて義なければ盗を爲す。
これは、門弟「子路」との問答である。
「君子(教養のある立派な人格者)は勇を尚ぶでしょうか。」
孔子は答えた。「もちろん君子は勇を大切に考えている。だが、勇気を奮う前に義
を考え、それが正しいと思ってから行動に移す。勇気だけ重んじて義をないがしろ
にするとみんなが勝手に行動し、時によっては内乱を起こしかねない。」
「小人と言われる教養のない粗雑な人間は、勇敢なことをいいことに義を考えずに
勝手に振舞うから、やがて乱暴狼藉に陥り、最後は盗みまで働くようになる。」
<太平洋戦争の傷跡>
古今東西の戦争の歴史を見ると、勇敢に戦った将兵達が、占領した土地の民衆に
何をしたか。義を重んじ、軍律厳しい指導者がいた部隊はなんら乱暴狼藉をしな
かったが、小人と言われる指導者のもとでは、略奪、強姦などしたい放題のこと
が、まかり通ったようだ。
|
◆ 君子は義に喩り、小人は利に喩る。 [里仁第四]
|
原文の意味・解釈
「喩(さと)る」とは、よく知っていること。
君子(教養のある立派な人格者)は、利益になると知っていても、その前に道義的
にどうかと道理を考える。小人(欲の皮のつっ張った三流の人物)は、利益と聞い
ただけで、儲けのために前後を考えずに、すべてに手を出す。
<二十世紀末の日本のあり様>
バブルの崩壊で、政界、官界、経済界、の一流の人物が贈収賄の汚職事件や会社倒
産の背任の罪で検挙され、晩節を汚したことは、まだ記憶に新しい。
これら悪人の座右の銘が「君子は義に喩り、小人は利に喩る。」なんてことはなか
ったでしょうね。
|
◆ 不義にして富み、且つ貴きは
我に於いて、浮雲の如し。 [述而第七]
|
原文の意味・解釈
この文言が含まれる全文{述而(じゅつじ)第七第十五章}は次の通りです。
子曰、
飯疏食飮水、曲肱而枕之、樂亦在其中矣、
不義而富且貴、於我如浮雲。
子、曰(のたま)わく、
疏食(そし)を飯(く)らい水を飮み、肱(ひじ)を曲まげてこれを枕とす。
樂しみ亦た其の中(うち)に在り。
不義にして富み且つ貴きは、我れに於いて浮雲(ふうん)の如し。
先生が言われた「粗末な飯をたべて水を飲み、うでを曲げてそれを枕にする。
楽しみは、やはりそこにも自然にあるものだ。道ならぬことで金持ちになり身分が
高くなるのは、わたくしにとっては浮き雲のように、はかなく無縁のものだ。
<カーネギーの言>
「世の中の人は、誰でもが幸福になりたいと思っている。それを手に入れる方法が
一つある。それは自分の気持ちの持ち方を変えることだ。」
「狭いながらも楽しい我が家」が一番の幸福。それを成すのは、父親のあり様か?
|
◆ 言、義に及ばず、好みて小恵を行う、難いかな。
[衛靈公第十五]
|
原文の意味・解釈
この原典{衛靈公(えいれいこう)第十五第十七章}は次の通りです。
子曰、
羣居終日、言不及義、好行小慧、難矣哉。
子、曰(のたま)わく、
羣居(ぐんきょ)して終日、言、義に及ばず、
好んで小慧(しょうけい)を行なう。
難(かた)いかな。
先生が言われた。「一日中大勢で集まっていて、話が道義のことには及ばず、
好んで小才だけひけらかす集まりは閉口する、なんと愚かで時間の無駄だろう。
<とある企業の会議風景>
「どうあることが正しいのか?」「筋道としてこの決定は間違っていないか?」と
いった道義的、本質的論議を交わす声は聞こえず。ただ、利巧ぶって自説を得意に
なってひけらかす者、利害にこだわった発言や、あるいは人気取りに終始する者。
人によっては感情的になって個人攻撃をする者などなど・・・
これは、貴方の会社の様子ではないですよネ。
|
◆ あとがき
|
明治時代の財界の大御所であった渋沢栄一。彼が設立にかかわった銀行、ガス、電
気などの株式会社の数は六百を超え、商工会議所など公共団体を創立したのが五百
余といわれる。しかし、彼は、三井、三菱、住友、安田、のような財閥をつくらな
かった。私益より公益を優先させたからであろう。
彼の九十二年の生涯は、まさに日本の資本主義のために捧げられたと言えよう。
その彼が信条としていた言葉「算盤の上に論語を置く」は、今の世の経営者にも欲
しい信条と言えよう。
|