東急ハンズの左利き用品コーナーはもうありません(だいぶ前から潰れてたのですが削除をサボってました)(2004/09/12)

左利きの繰り言

結婚祝いに、ある方から左利き用のハサミをいただいた。大変重宝しているのだが、実を言うと最初はかなり困惑した(理由は後述)。

結婚指輪をして会社に行ったら、物を書いたりする度に机に当たってカチカチと気になる音を立てる。2,3日のうちに柔らかい貴金属の表面は傷だらけになってしまった。それ以来タンスの奥にしまいこんで、一度もはめていない。腕時計は左手にしているが、これも物を書く際に邪魔になりやすい。しかし左手で時間を見る習慣がついてしまったので今更右手にはめる気にもならない。竜頭を巻きたい時はどうするかというと、一旦ベルトを外すのである。で、左手でしっかり保持してぎこちなく右手で巻くのだ。やりにくいことこの上ない。

どのくらいの母数で調査したのかは知らないが、左利きの人間の平均寿命は右利きの人間のそれに比べて短い、というデータがあるらしい。日常生活の中で様々な余計なストレスがかかるのが理由ではないかと言われている。

また、世に左利きの少ない理由として、一説には、左手で武器を持つと、心臓が敵に近く、また盾で護りにくい位置になるので死亡率が高かったと。ぱっと聞くとナルホド、と思えるが、実際のところはどうなのだろうか。心臓は左胸の真下、肋骨の中に収まっているわけではない。実際の心臓の位置は、レントゲン写真や解剖図を見れば一目瞭然だが、ほぼ体の真ん中にある。勿論、そこから左側に膨らんでいるので左側というのは間違いではない、が、脇腹にあるわけでもない。戦場ではわずかな差が生死を分ける、というのはわかるが、たとえ心臓を外したとて、肺まで達しようという重症を負ってそうそう生きながらえるものでもないとも思うのだが。

さて、左利き用のハサミが左利きの人間を困惑させる理由だが、殆どの左利きの人間は、物心ついた頃から右利き用のハサミを使っているため、無意識のうちに、左手にとってはちょっと不自然な力の入れ方をすることで、右手用に作られたハサミを使えるようになっている。従って、本来左手にとって自然な力の入れ方で使えるハサミをいきなり与えられると、慣れた(でも不自然な)力の入れ方をするために、刃のかみ合わせが離れてしまってちゃんと切れないために大層困惑させられてしまうのである。あと、切る際に見る方向(ハサミの右上から見るか左上から見るか)が逆になるのも大いなる困惑のタネとなる。よくしたもので、世の中には「右利き用のハサミに慣れてしまってこの方が楽に思える左利きの人のための、かみ合わせは右利き用ハサミと同じで、握りの形状が左手用になっているハサミ」というものも売られている。これはまだ入手していないが大層便利だろうと思う。ただ、仕事で紙をちょっと切るのに使うようなものだったら実のところどのハサミでもさして支障はない(左利き用のハサミは、右利きの人間に持ち去られない、というメリットはあるだろうが、「これ、切れないよ〜」と言われてポイ捨てされる危険もないではない)。一番辛いのが、裁ちバサミのような、金属の握りのハサミである。あれは手が痛くなるタイプのハサミなのだと思っていたが、要するに、金属で、しかも握りのカーブが右手用になっているものを左手で力を入れて握るものだから手が痛くなるだけの話なのである。左利き用の缶切りというものあって、「缶切りがこんなに楽なものとは知らなかった」とは実際に使った人の弁であるが、缶切りは結構力とコツが要る、と思っているのも左利きの人間だけらしい。

左利きは器用だ」とかよく言われる。考えて見れば当たり前の話で、ある程度の小器用さがないと右利き社会ではやっていけないのである(しかし、ものすごく器用というわけでもなかろう)。有形無形のストレスは降りかかってくる。寿命が少々縮んだとて何の不思議もない。

近年、左利きで一番不便だと思うのは自動改札である。バスカードの受付機・料金支払機も結構辛いものがある。自動改札の切符を出し入れする装置はみんな右側についている。余裕がある時は切符を右手に持ち替えて・・・ということもできるが、慌てているときや意識していない時は左手に切符を持っているので、左手を伸ばし、体を横にして、カニになって自動改札を抜けることになる。荷物が多いときは本当に難儀である。バスカードも、後部乗車型(つまり田舎を走るバス)だと、乗り口の右手側でカードを出し入れし、降りるときも右側にある機械でカードを出し入れすることになる。全く難儀な話である。自動改札対応の定期入れの取り出し口も、実は左利きにはちょっと不便に出来ている。嘘だと思ったら左手で出し入れしてみて頂きたい。財布も同様である。がま口も右利き用なんだそうで(道理で開けにくいわけだ)、左利き用がま口というのもあったりする。

包丁ナイフも困る。菜っ切り包丁は両刃なので問題ないが、出刃包丁を使おうとするとハタと途方に暮れることになる。さすがに右手で剥き出しの刃物は扱えない。仕方ないので、右手を包丁と交差して材料を押さえ、右手側(または手前から奥側)に向かって刃を滑らして切る。やりにくくてしょうがない。刺身包丁なんか絶対まともに使えない。ペーパーナイフも利き手に関係ないデザインの物を選ばないと泣くことになる。刃の方向とコルク抜きのらせんが逆になっている、左利き用のアーミーナイフを持っているが、ハサミが付いていない。残念ながら、左利き用のは(少なくともこの会社製のものは)これ1種類しか市販されていない。コストが高いだろうし販売価格も右利き用の同等品より高くなるからだと思うが、少々高くてもいいからハサミ付きのものを出して欲しいものである。そのようなものがあるとわかれば買う人間は結構いると思うのだが。

コーヒーカップやティーカップ、マグカップ類は、右手で持つことを想定して模様がつけられているものが多いので、素敵な絵柄があった筈なのに、左手で持つとなんとも素っ気ないカップに早変わり、などということもしばしばである。鍋の注ぎ口も左側だけについているものは使いにくい。レードルも左側から注ぐ形状のものは左利きには役に立たない。斜めに刃がついているスピードおろし金は左利きにとっては面倒なスローおろし金になる(らしい。私は斜めに刃が付いているタイプのものは使ったことがないのでわからない)

左利き用の商品カタログを見ていたら、右側にポケットがついているポロシャツやTシャツがあった。笑ってしまったが確かにペンを挿す胸ポケットは全部左側についている。白衣しかり制服しかり。作業服だと両方に付いているものもあるが、たいてい左側に1つだ。で、左ポケットに挿したペンを、左手を無意識にぐっと曲げて取り出している。やっぱり左利きは器用でないと生きて行けないらしい。万年筆のペン先も、左手で書こうとすると紙をひっかいてしまってうまく書けない仕様になっている。そもそも文字というものが大抵右手仕様である。左利きの子供が鏡文字を書いたりするのはある意味理の当然である。字を書くにあたって、左利きで便利だったことと言えば、書道で、紙の左側に名前を書く際に、右利きの子供だとこすって汚さないよう上に半紙を敷くのが、左手で小筆を持って書けば余分な紙が要らない(左手で筆を持つのは先生にはいい顔をされなかったけれども)、とか、珠算で、左手で計算結果を書きながら右手でご破算が出来る、ということくらいであった。

トランプカードのインデックスも大抵左側についているので、自然トランプは右手でもって開く習慣になってしまっている。両サイドにインデックスのついたカードを入手したので左手で開こうとしたが、うまく開けない。右手で開くことに慣れてしまっていて、左手で逆に開こうと思っても手が言うことを聞かないのだ。ツェルニーの、左手のための練習曲集だったか他の誰かの作品だったか、事故で右手を失ったピアニストのために作った、左手だけで弾く珍しい曲もあるというが、普通、ピアノをやっていると、左利きの人間でも、いつの間にか右手の方が左手よりよく動くようになる。殆どの曲が、右手は旋律、左手は伴奏という”手差別”をしているからである。よりよく動かしている手がよく動くようになるのは当然のことである。マンドリンをやった(やらされた)ときに、左利きだから弦を押さえる手が良く動くのでいいのでは、と言われたが、これもよく考えて見れば、右手で弦を押さえる方が都合が良ければ弦楽器は全部右手で押さえる形になっている筈である。そうでないのにはちゃんと理由がある。利き手でない手でピックを細かく素早く振動させたり(トレモロ奏法)、弦を押さえる指の動きに合わせて弾くのは非常に難しい。左利きなら右手で弦を押さえて左手で弦を弾くのが自然なやり方なのである。他の奏者とは楽器を逆に持つことになるので、合奏の場合は端に座るしかないだろうし、絵的に美しくないので指揮者は嫌がるだろうが。


左利きの人間の多くはこのようなことをいつも意識して暮らしているわけではない。日常生活で時々不便なことや嫌な思いをすることにぶつかって「ああ・・・」と思うがたいてい忘れてしまう。あるいはそんなものだと思って過ごしている。私がこのようなことを強く意識したのは、割と最近、とある通信販売の会社が左利き用の品物を集めたささやかな(本当にささやかな!)カタログを作ったのを見てからである。そのカタログで、左利きだと不便な、思いもよらぬ品々を見せつけられ、正直打ちのめされた。だいたい、スポーツ用品や刃物類(ハサミ、包丁、彫刻刀草刈り鎌、、、)は別として、すり鉢手帳計量カップその他上に挙げたもの挙げてないもの、こんなにたくさんのものどもが左利きを苛めていたとは。。。

今こうしてこの文章を書いていても身近にある右利きご用達のものたちがどんどん浮かんできて、とても書ききれない。会社でも、スチールデスクの右側の引き出しは死蔵ファイル入れと化し、よく使う書類は左側に置いたキャビネットのお世話になっている。しかし一番上の引き出しは筆記用具や事務用品入れに便利だから右側でも使わざるを得ない。物を取り出すのにいちいちナナメになるのは実に不便だ。

(以下延々(怨々?)増殖予定・・・)


2000/06/04
訂正と近況報告など
左利き用アーミーナイフ
ハサミ付きはちゃんと市販されていた。ネット通販があったので即購入。バネ代わりのメカニズムが巧妙に出来ていて、実にけなげにシャクシャクと切れてくれる。噛み合わせがしっかりしているので右利きの人でもうっかり使えてしまうようだ。感涙物。
これで、めでたくの方向もコルク抜きのらせんもハサミも左利き仕様になった。前のナイフは不要になったので、ハサミなしでも良いという方がいらっしゃればお譲りしたいのでご連絡を(と言い回っているのだが現在の所反応ナシlol)。
おろし金(スライサー)
家にあるのも右利き用に斜めに刃がついているタイプだった。昔からどうもスライサーがうまく使えなかった(野菜がいちいちひっかかる)ので、あまり使うこともしげしげと眺める事もなく、気づかなかったらしい。こんなものも使えないくらい不器用なのかと思っていたがどうも左利きのせいだったようだ。一度、左利き用のスライサーですいすい切ってみたいものである。
通販会社の左利き用カタログが復活
紙ベースのカタログのがいろいろ書いてあって面白いので、自分が左利きだという人間は言うに及ばず、家族や知り合いに左利きがいるとかその他で左利きに興味のある人間は送ってもらってソンはないだろう(次号から送付みたいだけど)。ただし商品の値段は・・・
あと、ここで売ってるアーミーナイフはハサミなしなのでご注意lol
すぐ送付してもらえますよ、とのご指摘をいただきました。欲しい人は今すぐ申し込みしましょうlol (2000/07/20)

2001/08/22
ちょっとだけ追加
左利き用万年筆
思い切って購入。万年筆がこんなに書きやすい筆記用具とは知らなかった。さっそく右利きどもに左利きの人間の苦労を味あわせてやろうと使わせてみたら、全然問題なくすいすい書ける。左利き用アーミーナイフのハサミもそうだったが、要するにモノがいいと利き手に関係なくうっかり使えてしまうようである。ち。
左利きにやさしくないカバン
内側に定期入れと携帯電話入れのついたトートバックをいただいて使っている。定期用ポケットが真ん中で、その片側に携帯電話ポケットがついているのだが、これを右肩に掛けて、さあ左手で電話を・・・後ろ側になって取りにくいことこの上なし。左肩にかけて右手で取る分には手前側になって便利なのだろうが、何が悲しゅうて利き腕側にカバンをかけにゃならん。
カバンは極力どちらの方にもかけるようにしたほうがいいとか言う話もあるらしいのだが、やっぱり慣れた側にかけてしまうので・・・ねえ。
VISORのスクロールバー
PDAのVISOR/PRISMを購入して愛用している。手帳要らずで便利なのだが、スクロールバーが右側なので、スタイラスでタップしてスクロールさせようとすると画面を横切る形になるので困る。有り難いもので左側にスクロールバーが来るようにするHackソフトがあるのだが、要するに無理やり左側に移動させるわけだから、どうしても不具合が出てくるものがあって困る(内蔵辞書など)。ああもう、なんでこんなに不便なんだか。
扇子
何でか最近ちょっとした流行りのようで、洋装で使っても会社で開いても違和感がない。ということで大昔にもらった扇子を引っぱり出してきたが、開く方向がこれまた逆である。左手では片手ですっと広げることができないのだ(お持ちの方は試してみていただきたい)。右手の助けを借りて広げるのは全然スマートじゃない。おまけに、扇ぐときも少し気をつけていないと自然にすぼまってきてしまう。悲しい悲しい。

2003/02/11
久しぶりですが、ま、そうそうネタがあるわけじゃないので
ボールペンやシャープペンシル
販促品でロゴが入っているもの。ハイっ、左手で持ってみましょう。ロゴが隠れちゃいましたね〜。
クリップの部分が当たって痛いけどくるっと回して無理やりロゴが見えるように・・・ハイっ、文字がさかさまですね〜。
ま、普通に使ってますとね、磨り減ってくるんですよ、ロゴが。ま、いいんですけどね、ロゴくらい、ええ、ええ。

あと、これは他のサイトに書いてあって「なるほど!確かにそうだ!」と思ったのですが、左手でボールペンとか長時間使ってますとね、緩んでくるんですよ、口金のネジが。なんでかな〜と思ってたんですが、要するに逆手なのでネジがゆるむ方ゆるむ方へと力がかかってるんですね。時々締めてやっては書き続けるわけですが、なかなか面倒です。これがシャープペンシルになりますと、ぐらぐらしてくるもんだから芯がぼきぼき折れちゃったりするんですね〜。シャーボ使ってて、なんでこんな芯が折れるかなぁと思って分解してみたら内部で緩んでました。あ〜あ


2003/08/17
店舗案内(だいぶ前から知ってたのですが紹介を忘れていました)
東急ハンズの左利き用品コーナー
JR名古屋高島屋に同居している東急ハンズ名古屋店8Fに左利きグッズのコーナーが設置されています。感涙。このコーナーに行くと、お金があったら、いや、なくても、この一シマの商品丸ごとお買い上げしたくなる衝動と闘うことになります。品揃えどうこう、値段がどうこうより、まず、このようなコーナーをエスカレーター前に設置した東急ハンズさんに拍手。どうかこのコーナーが消えたり小さくなったりしないで続いてくれますように。すり鉢買っちゃおうかなぁ。
2004/09/12
東急ハンズの左利き用品コーナーはもうありません(だいぶ前から潰れてたのですが削除をサボってました)
悲しいけれどこれが現実ですね。売れなかったんでしょうね。あの品物たちは何処に行っちゃったんだろう・・・

ところで、@niftyが日記をくれるというので、ここと雑記帳の所とは今後は日記で書こうかなぁ、と思っています(例えばこんな感じ)。全然更新してなくてすいません。


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