Subj:ルール紹介11:ファイブ・ハンドレッド From:赤桐裕二<mhb01072@nifty.ne.jp> Date:95/05/23 10:35
 今回は,日本でも古くから親しまれているファイブ・ハンドレッドを紹介し ます。 ********************************************************************** ファイブ・ハンドレッド(Five Hundred) 1995/5/23 赤桐  ファイブ・ハンドレッドは,20世紀の始めごろアメリカで生まれたゲーム です。現在ではオーストラリアの国民ゲームとなっています。  日本でも,「ノートランプ」という名称で親しまれてきました。  ユーカーを発展させたゲームと言えますが,シンプルなルールであるにもか かわらず,面白いゲームです。  アメリカとオーストラリアでは少しルールが違うのですが,ここではオース トラリアで行われているルールを中心に説明します。 ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ <人数>  3人。2人〜6人のゲームもありますが,後で説明します。 <カード>  各スートのA,K,Q,J,10,9,8,7とジョーカーの33枚のカー ド。 <カードの強さ>  切り札のスートでは,強いのから順に,ジョーカー(ベストバウアー), J(ライトバウアー=正ジャック),切り札と同色のスートのJ(レフトバウ アー=裏ジャック),A,K,Q,10,9,8,7の順です。ジョーカーは 常に切り札です。レフトバウアーはマークで表示されているスートではなく切 り札のスートに属します。  切札以外のスートでは,A,K,Q,J,10,9,8,7の順です。 <ディール>  最初のディーラーは任意のやり方で決めます。ディーラーはディールごとに 左隣のプレイヤーに移ります。  ディーラーは,ディーラーの左隣から時計回りに,まずまとめて3枚ずつ各 プレイヤーに配り,次にテーブル中央に裏向きに3枚を配ります。それから3 枚ずつ各プレイヤーに配り,さらに4枚ずつ配ります。各プレイヤーの手札は 10枚になります。  テーブル中央に置かれた3枚のカードは「キティー(kitty)」と呼ばれます。 <ビッド>  ディーラーの左隣から順に時計回りに,1人ずつビッドを行います。ビッド したくない場合には,「パス」と宣言します。  ビッドは切り札にするスートと,自分が何トリック取れるかを宣言していき ます。例えば,スペードを切り札にして7トリック以上取れると思ったら, 「セブン・スペード」というようにビッドします。  ビッドするトリック数は,最低6トリックです。最高はもちろん10トリッ クとなります。  切り札なしでプレイしたい場合には,「ノートランプ」とビッドします。例 えば「シックス・ノートランプ」というようにです。  誰かがパス以外のビッドを行ったら,それ以降のプレイヤーがビッドをする ときには,それより強いビッドをしなければなりません。  ビッドの強さは,トリック数の多いビッドのほうが少ないビッドよりも強く, 同じトリック数ならば,(強)ノートランプ,ハート,ダイアモンド,クラブ, スペード(弱)の順になります。  以上の他に,「ミゼール」とういうビッドと,「オープン・ミゼール」とい うビッドがあります。ミゼールはノートランプでプレイして1トリックも取ら ないことを目指します。オープンミゼールも同じことを目指しますが,デクレ アラーの手札は公開されます。  ミゼールのビッドの強さは,7トリックのビッドより強く,8トリックのビ ッドよりは弱くなります。オープンミゼールはすべてのビッドの中で最強です。  一度パスをしたプレイヤーでもビッドに参加できます。プレイヤー2人が続 けてパスをしたらビッドが終了します。  最後にビッドしたプレイヤーは,プレイにおいて,他の2人を相手にして, 1人でビッドしたトリック数以上を取ろうとします。このプレイヤーを「デク レアラー」と呼びます。  全員がパスをした場合,ノートランプでのプレイを行います。各プレイヤー はできるだけ多くのトリックを取ろうとします。  全員がパスをした場合は,誰もキティーを取らないでプレイします。 <交換>  デクレアラーは,プレイの前に,キティーの3枚を誰にも見せずに手札に加 え,手札から3枚のカードを裏向きに捨てます。 <プレイ>  トリックテイキングゲームの通常のルールに従います。  オープンミゼールの場合は,最初のリードの前に,デクレアラーは自分の手 札をテーブルに表向きに広げます。プレイは広げたまま行います。  最初のリードはデクレアラーが行います。全員がパスをした場合のプレイの 時には,ディーラーの左隣のプレイヤーが最初のリードを行います。  リードされたスートに対してはフォローの義務があります。フォローできな いときには,どのカードをプレイしてもかまいません。  ノートランプのゲームの場合にも,ジョーカーは1枚だけの切り札のスート のカードとして,切り札の役割をはたします。 <得点>  デクレアラーはビッドしたトリック数以上を取ることができた場合,ビッド は成功となり,次の表に基づいて得点します。(ただし,もちろんミゼールの ビッドの場合には1トリックも取らなかった時に限りビッドが成功します。)       [トリック数] 6 7 8 9 10   [切り札]   スペード 40 140 240 340 440   クラブ 60 160 260 360 460   ダイアモンド 80 180 280 380 480   ハート 100 200 300 400 500   ノートランプ 120 220 320 420 520 ミゼール : 250   オープン・ミゼール : 520  ビッドしたトリック数よりたくさんのトリックを取っても,追加の得点はあ りません。ただし,10トリック全部を取った場合で,ビッドの点数が250 点より低かった場合に限り,ビッドの点数ではなく,250点を得点します。  デクレアラーがビッドに失敗した場合には,上記のビッドの点数が,デクレ アラーのマイナスの得点となります。  デクレアラー以外のプレイヤーは,ビッドの成功失敗にかかわらず,自分の 取った1トリックについて10点ずつ得点します。  全員がパスした場合のプレイにおいても,各プレイヤーは自分の取った1ト リックについて10点ずつ得点します。 <ゲーム>  誰かの得点が500点以上になるか,マイナス500点以下になった場合, ゲームが終了します。  得点が最も多いプレイヤーが勝者となります。 ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++  2人,4人,5人,6人用のゲームを紹介します。いずれのゲームにおいて も手札は10枚ずつとなり,残りがキティーとなります。 <2人ゲーム>  各スートのA,K,Q,J,10,9とジョーカーの25枚のカードを使用 します。  キティーは5枚になります。 <4人ゲーム>  各スートのA,K,Q,J,10,9,8,7,6,5とハートとダイアモ ンドの4とジョーカーの43枚のカードを使用します。  向かい合った2人がパートナーになります。パートナーの取ったトリックは 合計されます。パートナーは得点を共有します。  デクレアラーだけがキティーと手札の交換をします。  シリアスなプレイでは,ジョーカーなしの42枚でゲームが行われることが あります。この場合,キティーは2枚となります。 <5人ゲーム>  通常の52枚のカードとジョーカーの53枚のカードを使います。  ビッドが決まりキティーと手札の交換が行われたあと,デクレアラーは自分 の持っていない(捨て札のなかにもない)切札以外のカードを指定します。こ のカードを持っているプレイヤーは,直ちに自分が持っていることをみんなに 知らせます。このプレイヤーがデクレアラーのパートナーになります。  デクレアラーとパートナーの取ったトリックは合計されます。その結果によ り,パートナーもデクレアラーと同じ得点(失点)を得ます。  デクレアラーは,パートナーを指定せずに,自分1人でプレイすることもで きます。  別のルールとして,カードではなく,プレイヤーを指名するというルールも あります。 <6人ゲーム>  特別のファイブ・ハンドレッド用の63枚のカードを使います。  通常の52枚のほかに,各スートには「11」と「12」のカードがありま す。さらに,ハートとダイアモンドには「13」のカードがあります。これら のカードの強さは,10のカードと絵札との間です。  向かい合った2人ずつがパートナーになります。  そのほかは,4人ゲームと同様です。  なお,1人おきに座っている3人がチームを組んで,残りの3人と対戦する やりかたもあります。 ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ <用語>  ミゼール(Misere)は英語読みではミゼアとなり,当然オーストラリアでも そう読まれているはずですが,外来フランス語であり,このフランス読みの方 がゲームではよく使われているので,それに従いました。 ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ <注1>  最も古いルールでは,各プレイヤーは1度しかビッドを行うことができませ んでした。 <注2>  最も古いルールでは,ビッドを達成したときの点数が次のようでした。       [トリック数] 6 7 8 9 10   [切り札]   スペード 40 80 120 160 200   クラブ 60 120 180 240 300   ダイアモンド 80 160 240 320 400   ハート 100 200 300 400 500   ノートランプ 120 240 360 480 600  また,ビッドの強さは,点数の多いビッドの方が強くなります。同じ点数な らば,トリック数の多いビッドの方が強くなります。  スートによりひどい不公平がありますが,これも味があります。 <注3>  アメリカの伝統的なルールは,次のような点で,このルールと違います。  キティーのことを「ウィドー(Widow)」と呼びます。  ミゼールのことを「ナロー(Nullo)」と呼びます。ナローのビッドは「エイ ト・スペード」と「エイト・クラブ」の中間の強さを持ちます。(ナローのこ とを日本では伝統的にヌーラーと呼んでいます。)  オープン・ミゼールはありません。ミゼール(ナロー)もないことがありま す。  全員がパスをした場合には,プレイは行われません。 **********************************************************************