Subj:ルール紹介1:ピケット1 From:赤桐裕二<mhb01072@nifty.ne.jp> Date:95/02/08 16:30
これから不定期に,トランプのゲームのルールを1つずつ紹介していきたい と思います。今まで,なかよし村などで紹介してきたゲームだけでなく,新し いものも紹介する予定です。 会議室の状況などはあまり考えず,気ままに,不評でも好評でも続けていく つもりですので,よろしくおつきあい願います(あるいは,長文が多いので, スキップしてください)。ただし,どのくらいのペースでいつまで続くかは全 くわかりません。 疑問点などがありましたら,ご質問下さい。 最初は,私の最も好きなゲームの1つであるピケットを紹介します。 赤桐 ********************************************************************** ピケット(Piquet) 1995/2/8 赤桐 ピケットは,16世紀の始めごろから現在まで生きのびている,非常に歴史 のあるゲームです。フランスのゲームといわれてきましたが,英国でも人気が あります。 勝つためには技術の必要なゲームです。現在のカードゲームの愛好家の間で も,2人ゲームのベストワンであると考えている人がたくさんいます。 なお,英語圏においても「ピケ」とフランス風に発音されることも多いので すが,私の好みで「ピケット」と表示しておきます。 ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ <人数> 2人 <カード> 各スートのA,K,Q,J,10,9,8,7の32枚のカードを使います。 <カードの強さ> (強い)A,K,Q,J,10,9,8,7(弱い)の順です。 <ゲーム> 通常1ゲームは6ディール行います。同点の時は2ディールずつ延長します。 なお,ディール中の得点はメモしておき,1ディールが終わったら,そのデ ィールの合計得点をスコアシートに書き入れるようにすればよいでしょう。 <ディール> カットして高位の札を引いた人が,最初のディーラーを誰にするかを決定で きます。1ディール毎にディーラーは交替します。 このゲームではディーラーをヤンガーと呼び,ディーラーでないほうをエル ダーと呼びます。 カードは,エルダーから先に,まとめて2枚ずつ6回配り,各プレイヤーの 手札が12枚になるようにします。 残った8枚は裏向けてテーブル中央に置きます。これをタロンと呼びます。 <カルトブランシュ> 配られた手札にK,Q,Jが1枚もないときカルトブランシュ(Carte Blanche) として10点の得点が得られます。 カルトブランシュを宣言する人は,カードの交換を行なう前に,手札を1枚 ずつ,すばやくテーブルの上に表向きに数え下ろして,相手に見せます。その あと,再びカードは相手に見えないように手札に戻します。 ヤンガーがカルテブランシュを宣言するのは,エルダーが交換を行なってか らでもかまいません。 <交換> まずエルダーが,何枚かのカードを手札から裏向きに捨て札してから,同じ 枚数のカードをタロンから引いてきます。少なくとも1枚はこうして交換しな ければなりません。最高で5枚まで交換できます。 そのあと,ヤンガーも同じようにタロンと手札の交換をします。ヤンガーは 1枚も交換しなくてもかまいません。交換できる最高の枚数は残っているタロ ン全部です。 ヤンガーが交換したあとにタロンにカードが残っていたら,ヤンガーは,残 りのカードを表向きにして全員に公開することができますが,しなくてもかま いません。 交換の時に自分が捨てた札は,あとで見てもかまいません。 <宣言> 交換の後,手札の役を,ポイント,シークエンス,セットの順で宣言します。 なお,宣言は実際よりも低く申告してもかまいません。これをシンクと言い ます。 [ポイント] 各人の一番長いスートの長さを競います。同じ長さならば,A=11,K, Q,J=10,それ以外=数字のまま,として合計の多いほうが勝ちます。勝 った方はそのスートのカード1枚につき1点を得点できます。点数も同じなら ばどちらも得点しません。 ポイントの宣言はつぎのように行ないます。 1)エルダーが長いスートを何枚持っているかを言います。例えば,「6 枚」というようにです。 2)ヤンガーが「私の勝ちです」("Not Good")とか,「あなたの勝ちで す」("Good")とか,「同じです」("Equal")とか答えます。 3)同じ枚数ならば,エルダーはカードの点数を告げ,ヤンガーはさほど と同じように答えます。 4)勝っているほうが得点を得ます。要求があれば,どのスートで得点を あげたかを,相手に告げなければなりません。 [シークエンス] 長いシークエンスを持っているほうが勝ちます。シークエンスとは3枚以上 の同じスートの順並び札です。AはKにつながります。同じ長さならば,1番 高位のカードを比べて,強いほうのシークエンスが勝ちます。強さも同じなら ば,どちらも得点しません。 勝ったプレーヤーの手札の中に他のシークエンスがあれば,それも得点でき ます。 点数は,3枚=3点,4枚=4点,5枚=15点,6枚=16点,7枚=17 点,8枚=18点です。 シークエンスの宣言はつぎのように行ないます。 1)エルダーが自分のシークエンスの長さと強さを宣言すします。例えば, クイーンを頭にした4枚のシークエンスがあれば,「クイーンの4枚 シークエンス」と宣言します。 2)ヤンガーが「私の勝ちです」とか,「あなたの勝ちです」とか,「同 じです」とか答えます。 4)勝っているほうが得点を得ます(他のシークエンスの得点も得ること ができます)。要求があれば,得点するシークエンスの長さと強さを 相手に告げなければなりません。 [セット] A,K,Q,J,10の3枚または4枚の同位札です。3枚より4枚が勝ち ます。同じ枚数ならば高位のカードのセットが勝ちます。 勝ったプレーヤーの手札の中に他のセットがあれば,それも得点できます。 点数は,3枚=3点,4枚=14点です。 セットの宣言はつぎのように行ないます。 1)エルダーが自分のセットの長さと強さを宣言します。例えば,キング の4枚のセットがあれば,「キングの4枚セット」と宣言します。 2)ヤンガーが「私の勝ちです」とか,「あなたの勝ちです」とか,「同 じです」とか答えます。 4)勝っているほうが得点を得ます(他のセットの得点も得ることができ ます)。要求があれば,得点するセットの長さと強さを相手に告げな ければなりません。 <プレー> トリックテイキングゲームです。 エルダーが最初のリードをします。以後は勝った方がリードをします。切札 はありません。フォローの義務だけはあります。 プレイで次の点数が発生します。 最初のリード......1点 (自動的にエルダー) 自分のリードで勝つ...1点 敵のリードで勝つ....2点 得点を分かりやすくするために,自分のリードで勝った場合は取ったトリッ クを横向きにしておき,相手のリードで勝った場合には取ったトリックを縦に しておくとよいでしょう。 7トリック以上勝つと,さらに10点もらえます。これをカードの得点と呼 びます。どちらも7トリック以上勝たなければ,この得点は発生しません。 全トリックを勝つと,10点のカードの得点の代わりに,40点もらえます。 これをカボット(Capot)の得点と呼びます。 <ピックとリピック> あるディールで相手が何も得点しないうちに自分が30点以上得点したとき に,次の点数がもらえます。 プレーの前なら...リピック(Repique)...60点 プレーの後なら...ピック(Pique).......30点 リピックかどうか判定するためには,カルトブランシュ,ポイント,シーク エンス,セットの順に正しく得点を計算しなければなりません。 ピックを判定するためには,プレイの得点が発生するごとに点数をつけてい きます。 プレーで7トリック以上取った時の点数(10点)や全トリック取った時の 点数(40点)は,ピックのための点数にはなりません。 なお,エルダーは最初のリードで得点するので,ピックされることはありま せん。 <ゲーム終了後の点数計算> 負けた方の点数が100点以上の場合,勝った方の得点は 2人の点数の差+100点 負けた方の点数が100点未満の場合,勝った方の得点は 2人の点数の合計+100点 となります。 (勝ったほうも100点未満であっても,こうなります。) ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
Subj:ルール紹介2:ピケット2 From:赤桐裕二<mhb01072@nifty.ne.jp> Date:95/02/08 16:34
ピケットのルールの要約と注釈です。 1995/2/8 赤桐 ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ <要約> [人数] 2人 [カード] 32枚 [強さのランク] AKQJT987(各スート) [ゲーム] 1ゲーム=6ディール(同点の時は2ディールの延長戦) [ディール] カットして高位の札を引いた人が最初のディーラーを決める。1 ディール毎にディーラーは交替する。カードは2枚ずつ6回 配る。残っ た8枚は裏向きにテーブルに置く(タロン)。 [カルトブランシュ] 配られた手札にK,Q,Jがないとき10点の得点。 [交換] エルダー(ノンディーラー)が1枚〜5枚交換後,ヤンガー(ディー ラー)が0枚〜場に残った枚数交換する。交換は捨て札が先。 [宣言]ポイント,シークエンス,セットの順で宣言。 {ポイント} 各人の一番長いスートの長さを競う。同じ長さならば,A= 11,K,Q,J=10,それ以外=数字のまま,として合計の多いほう が勝つ。勝った方はそのスートのカード1枚につき1点。 {シークエンス} 長いシークエンスを持っているほうが勝つ(3枚以上,A はキングに続く)。同じ長さならば高位のシークエンスが勝つ。勝ったプ レーヤーの手札の中に他のシークエンスがあれば,それも得点できる。 3枚=3点,4枚=4点,5枚=15点,6枚=16点,7枚=17点,8枚=18点。 {セット} A,K,Q,J,Tの3枚または4枚の同位札。3枚より4枚が 勝つ。同じ枚数ならば高位が勝つ。勝ったプレーヤーの手札の中に他のセ ットがあれば,それも得点できる。 3枚=3点,4枚=14点。 [プレー] エルダーが最初のリード。以後は勝った方のリード。切札なし。フ ォローの義務のみあり。 最初のリード......1点 (自動的にエルダー) 自分のリードで勝つ...1点 敵のリードで勝つ....2点 7トリック以上勝つ...10点 全トリック勝つ.....40点(10点の代わりに)(カポット) [ピックとリピック] あるディールで相手が何も得点しないうちに自分が30 点以上得点したとき; プレーの前なら...60点(リピック) プレーの後なら...30点(ピック) [ゲーム終了後の点数計算] 負けた方の点数が100点以上の場合,勝った方の得点は 2人の点数の差+100点 負けた方の点数が100点未満の場合,勝った方の得点は 2人の点数の合計+100点 ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ <用語> シークエンスとセットにはそれぞれ名前がついています。 3枚シークエンス: ティアス(Tierce) 4枚シークエンス: クオート(Quart) 5枚シークエンス: クイント(Quint) 6枚シークエンス: シジュエーム(Sixieme) 7枚シークエンス: セティエーム(Septieme) 8枚シークエンス: ユイティエーム(Huitieme) 3枚セット : トリオ(Trio) 4枚セット : カトルズ(Quatorze) 以上は英語化されたフランス語です。フランス語の現代の用語では,それぞ れ,Tierce(ティエルス),Quatrieme(カトリエーム),Quinte(ケント)または Cinquieme(センキエーム),Sixieme(シジュエーム)またはSeizieme(セジュエ ーム),Septieme(セティエーム)またはDix-Septieme(ディセティエーム), Huitieme(ユイティエーム)またはDix-Huitieme(ディジュイティエーム),Brelan (ブレラン)またはTrio(トリオ),Quatorze(カトルズ)です。 英語圏でも,1ゲームのことを,フランス風にPartie(パルティ)と呼ぶこ とがよくあります。 ピック,リピックはフランス語ではPic(ピック),Repic(ルピック)となり ます。カポット(Capot)はフランス読みでは「カポ」となります。 カルトブランシュのことを単にブランク(Blank)と呼ぶこともあります。 ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ <補注1> カードは3枚ずつまとめて配るやりかたもあります。また,2枚,3枚,2 枚,3枚,2枚というように配る流儀もあります。 <補注2> 最も厳格なルールでは,カルテブランシュは次のように宣言します。 ヤンガーがカルトブランシュの時: 1.カルトブランシュを宣言する 2.エルダーが手札を交換するのを待つ 3.自分の手札を相手にみせる 4.自分の手札の交換をする エルダーがカルトブランシュの時: 1.カルトブランシュを宣言する 2.自分が何枚手札を交換するつもりかを相手に告げる 3.ヤンガーがその残りの範囲内で手札の捨て札をする。 4.自分の手札を相手に見せる 5.自分の手札の交換をする 6.ヤンガーがタロンから手札の補充をする From "All the Best Games" by David Parlett <補注3> 交換のときに,次のようなルールが行われることもあります。 「エルダーが交換するとき,5枚より少なく交換した場合,交換する権利の あった山札を見ることができる。」 David Parlettの著書による <補注4> シークエンスの宣言は,エルダーがまず枚数だけを告げ,それが同じだった ら,シークエンスの最高位のカードのランクを告げるというやり方もあります。 セットの宣言も,エルダーがまず枚数だけを告げて,それが同じだったら, ランクを告げるやり方もあります。 <補注5> メモを取らないで,口頭だけで得点を計算する場合には,ポイントやシーク エンスやセットの宣言のときには点数を計算しません。 宣言が終わってから,まずエルダーが自分の勝った宣言の点数を発表し,累 計を計算していきます。そのあと,最初のリードを行い,1点を加算します。 そのあと,ヤンガーが同じように点数を発表し,累計を計算したあと,プレ イを行います。 ただし,これはあくまで便宜的なものであり,リピックを判定する目的では, ポイント,シークエンス,セットの順に得点が入ったもととします。 <補注6> プレイ中の点数の数え方を次のようにするやり方もありますが,結果は同じ です。口頭で点数を数える場合には,この方がやり易いかもしれません。 カードをリードするごとに : 1点 相手がリードしたトリックに勝つごとに : 1点 最後のトリックを取ると,さらに : 1点 <補注7> 古いルールでは,補注6の点数の数え方をした時に,10のランク以上の強 さのカードをリードしないと,リードの1点がもらえません。 <補注8> ここで紹介したような,6ディールで1ゲームとなり,負けたほうが100 点取っているかどうかで得点計算が変わってくるというピケットは,正確には ルビコン・ピケット(Rubicon Piquet)と呼ばれます。現在最も普通に行われて いるピケットです。 古くは,ディールを終わって,どちらかが100点を超えていたら,ゲーム 終了となるピケットも行われていました。ピケ・オ・サン(Piquet au Cent)と 呼ばれます。勝ったほうの得点は,点数の差額となりますが,負けたほうが50 点未満だと,得点が倍になります。 **********************************************************************