月組大劇場公演 *リピート編*


 『黒い瞳』を見てこれぞ王道!宝塚らしい傑作!…と感動していた自分が、『螺旋のオルフェ』にもハマってしまった…。(マミちゃんってホント、良い作品に恵まれてて幸せ〜!)
 対局にあるように思われる2作品だが、自分はどうやら軽め系の作品があまり好きでないようだ。とにかくマミちゃんは“苦悩”しなくちゃダメ!

 『螺旋』のいいところはね、まずセット!正塚『ロマノフ』みたく、盆使いが好きなんです。カーテン前とかどうも苦手なので、セットはたくさんなくてもいい。シンプルでセンスが良くてgood!セットは1つのみ。それを表、裏と使い、或いは半分を覆い隠し上下で使う。アントワーヌが逃げるところとか、花道の使い方も上手い!
 それから、生徒も好きらしいが、自分もセリが大好きなので、セリはどんどん使って欲しい。『螺旋』は一見シンプルなのでセリのような派手な装置は合わないような気がするが、またこれが使い方が上手いんだ!マミちゃんのイヴが主題歌を歌い♪さらわれ消える…♪の直後に盆が回りながらセリ下がるところなんて、すうっと舞台から消えるようで幻想的で素敵。次のセリ上がりは狂言廻し的な人々がイヴのことをあれこれ説明したあと。何とマミちゃんは目を閉じてセリ上がってくるのだ!そして上がりきる寸前に目をかっと見開く。この視線がまた決まってる!宝塚の化粧って、つけまつげって、こういう事をするためにあるのね!この時の衣装、トレンチコートのベルトをきっちりと締め、広い肩幅と相まって見事なXライン!この後の芝居で客席に背を向けてベルトを外しているので、踊りやすくするために締めてるのか、演出なのかわからないけど、マミちゃんのカッコ良さが活かされてる。ハヌッセンがアリオンを“本物の魔術師”と言った後のアリオンの上手セリ上がりもイイ。現世ではないところからスッと現れたまやかしのようだ。

 この作品、衣装もスーツや軍服、トレンチコートで、シンプルで素敵!こういう作品に当たって良かった〜!スーツやシャツの色、コートの色使いもセンスいい。ラストのパーティではマミちゃんが光沢のある紺のスーツ、檀ちゃんの真っ赤なドレス、リカちゃんの緑の妖しい“占い師”っぽいスーツ、キレイなコントラストだわ。
 リカちゃんのマントもゴテゴテしてなくていいし、フツー妖しげな降霊術師っていったら、もっと派手な衣装とか着せられちゃうけど『螺旋』は違う!リカちゃんのカッコ良さを活かしてる。
 檀ちゃんのドレスも何だかシビラっぽくて可愛い。三恵ちゃんの紫のドレスも形がキレイ!(新公のアニタっぽい?)ショートのカツラを合わせるのがいい。タニくんのスーツ、黒のジャケットとインナーのオレンジがいいバランスだし、きりやん始めパリの学生たちはハンチング帽が可愛い。ユラちゃんはスリットの入ったスーツもいいし、黒のパーティドレスなんて胸元のカッティングが変わってて素敵なデザイン!コモちゃんのオレンジのワンピもシンプルながら、紫のリボンが効いてるし、アツのスーツもいかにも“マフィアのお嬢様”っぽくてイイ。ケロちゃんのスーツもスパイの孤独感が滲み出てていいし、かなり頭が切れるんだろうなぁ、というビシッとした感じ。同じように秘密の業務に付いてるガイチくんのスーツとはまた違って、どっちがイイ人か、ちゃんと衣装も示してる感じ。ゆうひくんや卯城さんのマフィアの格好も決まってるし。越リュウのちょっと危なそうな衣装もイイ。
 それから大好きな黒エンビ!(残念ながらマミ・リカは着ない)花道の端までエンビがズラッと並ぶともう豪華でワクワクする。ブラブラと飾りの付いたちょっと変わったダルマやチュチュの娘役も花を添えるし。嘉月絵里ちゃんのサファリっぽいスーツも何だか堅そうで、コミュニストっぽい感じでいい。矢代さんの黒のドレスもまた、形がキレイでゴージャス!
 檀ちゃんの衣装で一番好きなのは中盤の幻想シーンの白いドレス!ヘッドドレスっていうの?『ローマの休日』でアン王女がしてたみたいな小さな頭飾りが可愛い!ドレスの形もふんわりしていてキレイだし、襟刳りの開きがまたいい!アデルの影っぽい娘役はパステルカラーでホント、“イヴの中の美しい幻影”って感じ。ダークな色合いの中にあって、このシーンとルシルの衣装だけが唯一明るい。またこれも素敵な演出じゃありませんか!

 それから音楽。全て映画音楽みたいにドラマチック!そして螺旋チックでもあります。みんな目眩系、渦を巻く巻く〜。歌詞も素晴らしく、薄っぺらな曲はひとつもナイ。
 開演前に流れる『幻想の終幕』はすごくイイ曲!(戦闘場面でのアップテンポバージョンと、歌メインのしみじみバージョンがある。違う曲みたい!)
 矢代さんの歌で始まるんだけど、また歌詞が泣けるぜ。♪哀しい夢の最後の場面♪とか♪別れの口づけ待ってる♪とか。
 主題歌は秀逸で、「螺旋階段をメロディで表す」ことにちゃんと成功してるの。ピアノの戦慄に目眩がしそうな曲。哀しくて美しい。歌詞もキレイ。
 アリオン登場!〜アツのド迫力熱唱〜黒エンビの群舞の辺りの曲も素敵。マイナー調の曲が好きなのかも。♪妖しい影 優しく忍び寄り♪なんて、アリオンの事を歌っているのねぇ。ドラマチックに盛り上がり、群舞もピークに。
 『パリ50’s』は明るくて楽しい曲。こういう曲が救いというか、何か切なくなります。
 イヴの哀しい歌、♪その日眠りに落ちた街 悪い夢が世界覆う♪なんて…。この曲、ユラちゃんのセリフが効いてるのよね。「彼はフランスを救った天使。だけど彼はナチスが残した爆弾でパリを脅迫する悪魔!」って。アデルのこと、♪遥か遠い空の彼方 消えた白い羽根の鳥はもう戻りはしない…♪とあり、幻想の中のアデルは黒の衣装だけど、マミちゃんにとっては白い鳥なのね。この曲は檀ちゃんの短いソロ、イヴとの将来を夢見て歌うところにも出てきます。♪魂が覚えてる 優しいぬくもり♪ってね。
 白いドレスを着た檀ちゃんの幻想シーンの曲も切なくて美しい。…のにアリオンの歌になった途端、ドラマチックに変わり、全然違う曲みたい。アップテンポになってカッコイイ!♪幻を追いかけて 光から背を向ける 繰り返す過ちさえ 壊れかけたこの世界の傷跡慰めてくれると信じて♪ラストのフレーズは難易度高し!って感じ。それにしても本当に歌詞が美しい!♪黄泉の国の扉を ほんのわずか開いて 帰らぬ姿を もう一度見せてやろう お前の望むまま♪だって!!リカちゃんに「見せてやろう」なんて言われるともう、どうにでもして!って思っちゃう。アリオン様の不思議な誘惑、誰でも絶対に屈してしまうだろう。
 そしてまた綺麗なメロディーに戻り、檀ちゃんのこれまた綺麗な流れるような振り付けの幻想シーン。曲や振り、衣装が綺麗あればあるほど、マミちゃんの苦悩がハッキリと際立つという感じ。余計哀しくなるのよね。『ローンウルフ』の幻想のバレエシーンに匹敵するね、ここ。マミちゃんが空をつかむシーンの美しいこと!ここまでのクールなイヴとは違い、切ない、哀しい、弱いイヴを見せてくれます。すれ違うシーンは映画の『ゴースト』みたいでいいですね。
 そしてこの盛り上がりは…と思ったら遂に出た出た!月組公演の楽しみ、マミ&リカの掛け合いの歌!キャー!『黒ひー』の橇再び!マミちゃんの♪生きて行く 意味さえすでになくし♪や♪呼び覚ます声 残された声 ただ虚ろに響く♪なんて、切ないわ。メロディも流れるように綺麗で、力強い。高音部で盛り上がり、マミちゃんの鼻にかかった色気のある声が楽しめて嬉しい!♪昨日の夜に閉じこめた微笑み 最後の言葉に耳を覆い隠し♪(舞台上のマミちゃんはホントに耳を覆う)にかかるリカちゃんの♪答えを待たずに♪、そして2人の♪彼方に彷徨う♪…。完璧だ…。恐れ入りました。ここ、お芝居の最大の見せ場かも。拍手も大きい。客のみんなが心を打たれてるもん。そしてタレちゃんのソロが幻想的に響く。♪幻を追いかけて 光から背を向ける♪、ここリカちゃんのパートのリフレインなのね。
 イヴと3人の女のダンスはパーカッションの使い方がカッコイイ。ナチの軍服姿の影、娘役もいい感じ。『蜘蛛女のキス』みたい。
 そして、アデルの最後の場面。流れるのはオープニングで使われた『幻想の終幕』。銃声が全く入らず、音楽のみの戦闘場面。銃を構えた檀ちゃん、その美しさから余計、悲壮感が滲み出るって感じ。音楽は哀しい陰ソロになり、マミちゃんの最後の銃声。リカちゃんの意地悪な囁き、バックの美しい旋律。アリオン様って本当、ゾクッとする…。
 ラストのパーティのダンスの曲は主題歌のバリエーション。うーん、どこまで行ってもマイナーな曲ばかり…。でもいいの、メロディが美しいから。アップテンポにするとウインナワルツの曲になるのね。檀ちゃんのステップが美しい。ウインナワルツって難しいのよ〜。そしてまた“幻を追いかけて”の歌に。タレちゃんの独唱が美しい。
 ラスト、夜明けの舞台に響く『幻想の終幕』。ガイチくんの♪見果てぬ幻が窓辺に今 迷路の入口指差し 渇いた心惑わす微笑みを投げる♪、難しいパートを難なく歌ってて耳に心地よい。“迷路の入口”、これも物語のキーワードよね。指差しているのはきっとアリオン?続く矢代さんの♪偽りばかりを重ねて 渇いた胸を潤す空しさに溺れ♪もヨイ。“渇いた胸を潤す空しさ”というのは色々な女とのラブ・アフェアーなのかしら。矢代さんの歌、大迫力で聞かせます。最後はリカちゃん。♪この胸を狂わせる 見果てぬ幻を抱きしめて 過ぎ去る時代の扉に 渇いた歌を別れの口づけに変えて♪。“胸を狂わせる見果てぬ幻”、アデルのことなのね。ホント、歌詞が素晴らしい。全て物語を歌っているのね。
 マミちゃんは歌わず、微笑みを浮かべて銀橋から歩み去るけどそれでいいの。舞台上のルシルにほんのちょっと頷き、緞帳が降りた舞台をバックに下手花道、キッと前を見据え、新しい人生を歩み出す…。その視線と決意のわずかな微笑みがいいの。イヴの人生、きっとやり直すのだろう。その表情の明るさから分かる。

 構成もニクイ!『幻想の終幕』にかぶる、マミちゃんのいつもよりも低い声のアナウンス。暗くて冷たい口調なの。そして紗のカーテンの向こうにぼんやりと浮かび上がる螺旋階段&マミちゃんの広い…広すぎる肩幅!いや、トレンチコート!客席に背を向けたこれぞ男役!のマミちゃん。荻田先生、分かってるねぇ〜!ファンのツボ!ここにまたテーマ?のモノローグが流れる。(プロにある気が遠くなるほど…云々)ラスト近くにも登場するちょっと気取りすぎ?みたいなこのセリフ。大丈夫、分からなくても。最後にちゃんと、いや何とか分かるから。
 物語の中には、ところどころ過去、というか幻想シーンが入るけど、ちゃんと分かる。色や舞台における立ち位置で区別してるらしい。セットの上を使うか、下を使うか、こんなところにもちゃんと意味がある。檀ちゃんのドレスの色も使い分けてるし。螺旋階段の上に座るアリオンと巫女、その下のイヴとルシル。螺旋の上か下かでちゃんと黄泉の世界と現実をキッチリ分けてる。螺旋階段や脇の階段、イヴや檀ちゃん、アリオンが昇降するときにもちゃんと意味がある。檀ちゃんは螺旋階段を上り、アリオンのマントにくるまれて消える。ここは死を暗示。ラストのアリオンとイヴの階段でのすれ違い、イヴはアリオンと途中で会うのだけれど、しっかりと下に降りて行く。→新しい人生を選ぶイヴの象徴って感じ。…やっぱ一回じゃ分からないよ!?

 不思議な螺旋の世界、どうしても観たくて、wowowの小部屋も何十回と見てしまった…。どんな小さな設定にも全て意味がある…、荻田先生は天才!(但しクロート向け?なのか?)そして、陰のヒーロー、マミちゃんは素晴らしい!予定より多く、足を運ぶハメになりそう…。



| back |