うつ病

心理面の症状

 朝早く目がさめて、熟睡できぬまま起床時間を迎えてしまう。一日が始まるのかと思うと、気が滅入って頭が重く、食欲もない。体がダルくて、人が変わったように仕事に行きたくなくなる。掃除や洗濯が大好きで家の中をきれいに片づけなければ気がすまなかったのに、今や何もする気がなく、散らかしっ放しにしてしまう。朝刊を読んでも頭に入らない。テレビを見ても、音がうるさくてすぐ消したくなる。人付き合いが良かったのに、人と会いたくない。買い物に行っても献立を考えるのが面倒で、何も浮かんでこない。物忘れが多く、根気が続かない。夕方から夜にかけて、少し楽になるが、睡眠不足が続いているので今夜こそ眠れるだろうと思っても、朝早く目がさめてまたもやいやな朝を迎える。こんな二日酔いのような苦しさが、数週間も続くので病院に行って検査を受ける。しかし「どこも異常がない」と言われて途方に暮れてしまう。死にたいが自殺すると人に迷惑をかけるので、事故にでもあって、スッと消えてしまえたらどんなに楽だろう。

病気は必ず治ります

 待って下さい。うつ病の可能性が大いにあります。診察を受けて下さい。うつ病は治療すれば、治療期間は人によって様々ですが、必ず健康を取り戻す病気です。医師の指示に従って「治りました。今日で治療終結です」と言われるまでつづけることが大切です。再発をくり返す人は根気よく治療をつづけて下さい。

うつ病になりやすい性格

 うつ病になる人には、性格に特徴があります。礼儀正しい、勤勉な模範人間です。几帳面、完全主義で、義理堅い親切な人です。こういう人が、昇進して責任や仕事が増えると、慣れない事だから少々不完全でも仕方がない、とは考えられません。最初から完璧を目指します。待望の新居に引っ越して、近所づきあいに人一倍気をつかい、掃除も洗濯もきちんとします。他人との調和、秩序を大切にする人なので、人に迷惑をかけないようにしよう、とがんばります。結局、疲れ切って心身のエネルギーを失って、うつ病になるのです。

身体面の症状

 うつ病は心身共に疲れきった状態ですから、心身共に様々な症状が出ます。心理面の症状は、先に大体述べましたから、身体面の症状を挙げます。不眠、食欲不振、便秘、性欲低下、全身のダルさ、疲れ易さをほとんどのうつ病者が訴えます。朝早く目がさめて、眠った気がしないのが、うつ病の不眠の特徴です。この他よくあるのが、頭の症状です。頭痛、頭重、頭がしめつけられる。耳鳴、めまい、音がうるさい等です。次に胸の症状として、胸痛、胸の圧迫感、動悸。消化器の症状として、口の渇き、腹痛。この他、手のしびれ、ふるえ、肩こり、腰痛など、全身至る所に症状が出ます。

こういう治療が必要です

 治療の基本は、休息です。仕事は最低一ヶ月間は休みます。職場の人との連絡は、しゃ断します。休まずに治す事は出来ません。家でできるだけゴロゴロと怠け者になり切ります。治療を始めると数日間眠ってばかりいることがありますが、心配ご無用です。回復を速める大切な眠りです。気分転換に、温泉に行くとか、外食に行くとか、無理に散歩することはいけません。せっかく貯まったエネルギーを減らして、悪化させます。自然に退屈感が出てきて、散歩したくなったら、散歩してもかまいません。冠婚葬祭に出る事は出来るだけ控えましょう。退職、転居など、環境を変えるような重大事は、治るまで決めてはいけません。自信を失った状態で判断して実行すると、治ってから後悔する事になります。酒はうつ病を悪化させ、薬と併用すると危険なので、禁酒とします。
 働く意欲が出てきたら約1ヶ月のリハビリテーションをします。その時期がきたら、心身両面のリハビリテーションの具体的方法を主治医が指示します。リハビリテーションをして復職をしても再発しないようにする事が大切ですから。いわゆる肩ならし、心身の準備運動が必要なのです。
 薬が良く効きます。精神科の薬は恐い、くせになるからできるだけ飲まない方が良い、という誤解があります。薬は治った時点でやめられます。医師の指示通りに薬をのんだ方が早く治り、早く薬を減らせます。治療法を守って、じっと待ちましょう。果報は寝て待て。待てば海路の日和あり。
 復職してからも通院して下さい。徐々に仕事量を増やして、薬を徐々に減らしていきます。治療終結と主治医が判断するまで通院して下さい。
 その後変調を来したら、すぐ診察を受けて再発を防ぎましょう。