躁うつ病
躁状態とうつ状態の波のようなくり返し
躁状態は何となく前に比べて気が大きくなり大声で笑顔も増えてくる。口数が多くなり、金遣いが荒くなる。本人に注意すると急に怒り出して「自分は絶好調だ。余計な口出しをするな」と耳を貸さない。この辺りから家族や友人が変調に気付くが、半信半疑のまま時を過ごす。連日梯子酒をしたり、本人は達筆だと自慢するが妙な流れるような記号めいた模様を字と称する等、一人よがりの誇大的な行為がつづき、あげくの果てに高価な桐の箪笥を買って大き過ぎて部屋に入らなかったり、株や先物取引に手を出して大変な借金を抱え込む。まわりの人達があきらかに治療の必要性を感じ出す。しかし、本人に精神科受診を勧めると興奮して怒り出して拒否するのではないか、と不安で切り出せない。
治療への導入
本人は一見楽しそうな様子ですが、意外と自分が普段と違った異常な行為に走っているのではないか、と内心不安を抱えているものです。本人が信頼している人が毅然とした態度で優しく治療を勧めることが肝要です。この際、躁状態の時の本人の常識はずれの逸脱行為を挙げて非難してはいけません。本人を心配しているからこそ忠告するという態度を貫くことが大切です。本人が治療に同意したら、心配している人達に囲まれているという安心感を与えるためにも、できるだけ複数の人が自動車に同乗して当院に連れてきて下さい。
診察室に入ったら
本人一人だけ入室してもらい、信頼関係を作る診察をし、治療の同意を得ます。その上で家族に入室していただき、病気と療養の説明をし、少なくとも1ヶ月から3ヶ月は本人と親しい人に通院時に付添ってもらうよにします。躁状態が治った後に、しばらくうつ状態と似た状態になる事があります。躁状態の時に消費した心的エネルギーを取り返すための大切な休みです。うつ状態から抜け出せた後に躁状態が始まることもあります。波のような経過と最初に述べたのがこの事です。この経過から本来の健康体に戻るには長期間を要します。安定した生活がつづいても医師の許可なしに勝手に治療を中断しないで下さい。